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天天11
2006-06-30 Fri 03:34
 円蔵山柳洞寺山門前。
 冬木市最大の霊脈へと至るその道を、今宵、二つの影が占拠していた。
 その影を背に、御山を駆け上る集団が一つ。
 足音は三つ。淀みは無い。無論ただの一度も影を振り返ることなく――――その集団は去っていった。

「――――ふむ」

 その潔さに、感心したように小さく息を洩らした影は『セイバー』である。わざわざ端に寄って道を開けてまでみせ、言を違えることなく士郎達三人を通した黒衣の剣士は石段の中央へと戻ると、

「……さて。これでようやく邪魔者は消えたな、アサシン」

 にぃ、と。
 先刻までの傲慢なものとは違う、ひどく人好きのする笑みを満面に浮かべた。
 変化は、それだけに留まらなかった。表情と共に、その身から発する雰囲気ががらりと変わる。無骨な殺気はそのままだというのに、それはまるで喜びを隠すことを知らぬ子供のようでもあり――――いっそ微笑ましくさえあった。

「…………」

 まさしく人が変わったような、『セイバー』の変化。それを目の当たりにしたにもかかわらず、アサシンの表情に驚きは無い。彼ははただ楽しげな『セイバー』の気に僅かにあてられたのか、薄く微笑んだだけだった。
 対して、そんなアサシンの態度に『セイバー』は顔を歪め、「やはりな」と鼻を鳴らした。

「まったく、気付いていたなら早く言え、アサシン。これでは如何にも“らしく”振舞っていた儂が、阿呆のようではないか」

「――――なに。得意の兵法、邪魔をするのも無粋と思ってな」

 ようでもなにも、そのものであろう、と。
 そう言いたげなアサシンの声色に、素を曝け出した『セイバー』は忌々しそうに舌打ちする。
 
「……まあ、よいか。ぬしが口を噤んでいたおかげで、ようやくこの状況に持ち込めた」

「それも危ういところであったがな、『セイバー』。あと少し藪を突けば、蛇どころか獅子が牙を剥くところであった」

「言うな、アサシン。いや、彼の剣は自身の獲物と同じく、その性根まで真っ直ぐだったと見える。あのような手合いには、どうやら必要以上にやりすぎてしまうらしい」

 つまりは、先刻の不遜な言動全てが、アサシンとの一騎打ちを実現させるためのはったりだった。
 スキル『攪拌の構え』。敵の平常心を奪い戦闘能力を低下させる『セイバー』のそれは、最早技と言うよりこの剣士の習性に近い。
 対するは、アサシンのスキル『透化』である。武芸者として身に付けた明鏡止水の心得は、精神面への干渉を無効化し、『セイバー』の言動を柳のように受け流していた。

「……とは言え、存外偽りばかりでも無かったのだがな。あの黄金は、間違いなく極上の剣だった。ぬしがいなければ即座に飛びついていた所だったが――――」

 名残惜しむように呟くと、『セイバー』は僅かに興味の色を湛えた瞳でアサシンを見下ろした。

「むしろアサシン。ぬしはよくも、あれを前に今日まで我慢できたものだ」
  
 ――――お前は一度も、あの黄金の剣と刃を交えたいとは思わなかったのか、と。
 無遠慮なその問いかけに、しかしアサシンは表情を変えず、穏やかに目を伏せた。

「なに。あの剣には、既に敗れていたのでな」

「――――ふむ?」

 その口調。なにより『既に』という言葉に、興味をそそられた風情の『セイバー』は、

「……そうか。いや、やはり逃したのは失策であったか」

 しかしそれ以上何かを問うことはせず、真実惜しむようにそう呟いた。
 未練がましい『セイバー』の態度に、アサシンは苦笑を洩らす。
 ――――生前では知り得る機会の無かった西洋の剣を、思う存分堪能したい。
 その感情、決して解からぬ訳ではない。
 解からぬ訳ではないが。

「我侭な男だ。如何にそなたとは言え、それは贅沢が過ぎるというものだろう?『セイバー』」

「……言葉には気をつけたほうがよいぞ?アサシン」

 それでも今宵だけは彼の黄金に挑まずとも、己が望む充足を得られるだろうことを、彼らは共に知っていた。
 青と黒の侍の口の端が、示し合わせたかの如く同時につり上がる。

「つまりそれは。ぬしの方は心行くまで付き合ってくれるのだと、そう解釈してかまわんのだろうな?」

 答えは無い。何をいまさらとばかりに、五尺の長刀を携えた侍は石段を一つ上がる。
 その態度に、その顔に、なによりその殺気に。そうか、と嬉しそうに頷いた『セイバー』は、


「――――では、やろうか。巌流」


 親しい友を酒に誘うかのような口調で、そう告げた。
 
 

 押さえきれぬ歓喜を滲ませながら、『セイバー』の両手が同時に動いた。緩慢と言えるほどのゆったりとした動きで、右手が太刀の柄に、左手が脇差の柄にそれぞれ掛かる。
 その動き、傍目には刀を佩いた側である左手が僅かに窮屈そうに見えた。しかし慣れた手つきで鯉口を切った『セイバー』は、そのまま大きく羽を広げるような動作で両刀を同時に抜きさる。
 水に濡れたように光る、無銘の刀身。月の光を浴びた大小二本の刀を見つめるアサシンの眉が、訝しげに寄った。

(――――二刀だと?)

 確かに、武蔵と言えば二刀流で名を馳せた男。
 だがその実、彼の二天一流は実戦において二刀を用いるものではないはずだが――――。

「――――ク」

 よいか、とアサシンは胸中に湧いた疑問を笑い飛ばした。一刀であろうと二刀であろうとかまわない。どちらにせよ『セイバー』という剣士を、斬ってみるだけのこと。
 奇を衒っただけの二刀なら、即座に首を跳ね飛ばす。
 その逆であるのなら――――存分にそれを堪能すれば良い。


 二刀を抜いた『セイバー』は、そのまま肩を落とした。真剣を担った両の手が、太腿の辺りまでだらりと垂れ下がる。
 それぞれ刀を握る両手もまた、奇妙な形だった。親指より中指までは柄から僅かに離れているようであり、掴むというよりは薬指と小指で引っ掛け支えていると言ったほうが近い。
 自然体と言うにも、少々行き過ぎた脱力の姿勢。その構えを見たアサシンは、ほう、と僅かに目を見張った。

「“水”か。“火”はよいのか?『セイバー』」

 それが厳密には正しいとは言えぬだろう言い回しであることを、アサシン自身も自覚していたが。

「何、あれこれ考えるのはその時に応じて、というやつだ。なにより巌流よ――――」

 それでも意図するところは伝わったようだった。得意の兵法はもう良いのかと問うアサシンに対し、『セイバー』は脱力したまま、

「――――結局の所、剣士(わしら)が最後に頼みとする兵法とは剣(コレ)だろう――――!!」

 高らかな宣言と共に、階下に向けて飛び込み。
 二天と巌が、激突した。
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状況
2006-06-25 Sun 02:02
 気軽に書いていくはずだったのに、いつの間にか本編と同じくらい悩ませるとは何事か。
 とりあえず天天第一幕「地に咲く、花」はこれにて了。ここまでの分は近いうちにまとめて本編の下にでも載せたいと思います。

>次回も楽しみに待っています。
 未だ手をつけていませんが、次回と次々回は難産になることは目に見えているのです。果たしていつになるやら……。
 本編、あなざー共に先は長そうです。はい。
 
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天天10
2006-06-25 Sun 01:37
 about 10days ago


 冬木中央公園 《VSランサー》



 鉄と鋼が啼いていた。これ以上の酷使には耐えられぬという悲鳴、存分に振るわれることに対する歓喜。そのどちらとも取れる甲高い鳴き声は、剣戟が続くごとにその強さを増していく。
 
「……………ッツ!」

 網膜に映る白い火花の煌きに、自然と瞼が落ちてくる。
 
 激突する刃の生み出す火花だけが、その場を照らし出していた。斬撃と刺突を繰り返す両者の周囲に、人の手によって作られた明かりは無い。
 月にすら見放された今夜、二体のサーヴァントの周囲を飛び散る光は、既に断続的ですらなかった。アサシンとランサー、化け物じみた速度で繰り出される両者の剣戟は、絶えることなく光を生み、散らしていく。
 
「――――チ」

 刀と、槍。両者の獲物の種類だけ聞けば、アサシンとランサーのどちらに間合いの利があるかなど、即座に判断がつく。
 しかし、アサシンの握る物干し竿のあきれるような長さが、ランサーが本来得るべき間合いの利を削っていた。常識ではありえない距離にまで伸びてくる刀にいらだったランサーは、小さく舌打ちをすると手にした槍でアサシンの刀を跳ね上げ、そのまま背後へと跳躍する。

「…………貴様、一体何者だ?アサシン」

 剣はもちろん、槍すら届かない間合いを取ったランサーが、怪訝そうに呟いた。
 その問いに、闇の中でアサシンは僅かに微笑したに違いない。

「異なことを言う。そなたの言葉どおり、この身はアサシンのサーヴァントだ。それ以外に何があると?」

「ほざけ。そんな物まで用いて真名を隠そうとするサーヴァントが、唯のアサシンであるはずがなかろう」

 研ぎ澄まされた槍の先が、アサシンの手にした長刀を指す。

「……どうにも解せんな。ソレが、貴様の獲物であるはずがない。多少の魔力を帯びてはいるが、その刀は確かな実体を持ったこの時代の代物だ」

 顔を歪め、忌々しそうにランサーはそう吐き捨てた。
 背筋が凍りつくような視線で長刀を見据えたまま、槍兵はさらに言葉を紡ぐ。

「だがそれほどの長刀、如何な達人といえど扱いなれぬ者がああも自在に振り回せるものではない。ならば貴様は、その刀に慣れていると見るのが道理だ。
 この矛盾。その理由。真名を秘すためにわざわざ似通った刀を用意したという以外に、どう説明がつく?」

「良い目だ、ランサー。――――それほどに、この刀が気になるか?」

「気になるのではない。唯、気に入らんと言っている」

 槍兵の手が動いた。空気を根こそぎ薙ぎ払うように振るわれた長大な槍の穂先が、暗闇の中で不気味に光る。
 腰を落とし槍を構えたランサーの発する気配は、獲物を狙う獣のそれだ。

「刀を取れ、アサシン。貴様の本来の獲物をだ。これより先、なおもその代用品で打ち合うというのなら」

 これ以上の侮辱は赦さぬと、人の形をした獣が唸る。

「――――次は折る。その刀を、貴様の首ごとな」

 一目でそれとわかるほどの魔力が、ランサーの槍に“装填”された。そのまま天井知らずに力を蓄えていく槍は、元より結界じみたこの公園の空気を、異界のそれへと換えていく。
 


 ――――その殺気を浴びて、ようやく身体と意識の硬直が解けた。



「アサシン!!」

 体面なんてどこかに吹き飛んで、叫ぶ。何が言いたいのか頭の中で纏めきれずに、それでも堪らず、気が付けば目の前で背を向けている男の名前を呼んでいた。

「どうした、マスター」

「どうした、じゃない!アイツの言うとおり、一体何考えているんだアンタは!!」

 返された言葉は、頭に来るほど冷静な声だった。
 まさに柳に風。槍兵の殺気も俺の動揺も、この男にとっては気にするほどのことではないらしい。
 
「――――それは!その刀は実用に耐えられるような代物じゃない!同じように見えたって、ソイツはあんたの持っている刀よりどうしたって脆いんだ!そんな刀で戦ったら――――」

 言うまでもなく、折れる。ましてや英霊なんて連中の所持している名刀、名槍などと切り結べば、何時までもってくれるか。

「――――ぐ」

 奥歯を噛み締め、その言葉を飲み込んだ。不吉な想像を必死で打ち消す。あの刀に対する俺の不審・疑念は、それだけで今のアサシンにとって致命打になりかねない。
 そんなこちらの内心などかまわず、アサシンは飄々と肩越しに振り返ると、

「今更何を言う。私はこの刀を預かりたいと申し出、そなたはそれを承諾した。――――我らが刀剣を借り受ける目的など、振るう以外あるまいに」

「そ……れは」
 
 言葉に詰まる。アサシンを“引き寄せられた”時点で用済みとなった贋作・物干し竿。ただの一度も振るわれずに消えていく運命だったあの長刀を、言われるがままに貸し出したのは、確かに俺だ。
 自分の迂闊さに頭を抱えたくなる。アサシンに問いただすことなく、俺はあの刀が“予備”として持ち歩かれるものなのだと、勝手に思い込んでいた。
 実際に投影して、一つ分かったことがある。アサシンの持つ物干し竿は、脆い。達人が振るえば岩や鉄すら両断できる業物ではあるが、その特殊な形状のためかあの長刀はいとも簡単に曲がり、折れる。
 実際、前回の戦争でセイバー相手にあの刀は曲がったらしい。そのときの記憶はアサシンには無いらしいが、長さも重量も自分の刀と寸分違わぬ物が目の前にあれば、自身の獲物の脆さを知っているアサシンがその贋作を予備にと望んでもおかしくは無い。
 馬鹿だった。
 俺は、アサシンという剣士を完全に見誤っていた。
 アサシンは“万が一”のことなんて、欠片も考えちゃいない。刀が折れたなら、それで終わり。予備などという概念が、この男にあるはずが無かった。
 けれど、それなら。 

「どうしてわざわざ、あんたの刀より一段劣るソイツで戦う必要があるんだ」

 それが、わからない。あの贋作・物干し竿は会心の出来だという自負はあるが、それにしたってあらゆる面で本物に劣ることは違いない。
 そんなことは、アサシンほどの使い手ならこちらが言うまでも無く、手にした瞬間それと解かるはずだ。






「……さて。あえて言葉にするのなら」

 よほど情けない顔をしていたのか。
 微苦笑を洩らしたアサシンは形無きモノを見定めるように目を細めると、意識の半分をこちらに残したままランサーへと向き直り、

「――――興が乗った。つまりはそういうことになるか」

 そんな、訳の分からないことを口にした。






「興が乗った、だと?――――ふざけるなよアサシン。我が槍にそんなモノで対する理由が、ただの気紛れにすぎぬと吼えるか」

 口を噤みこちらの会話に耳を傾けていたランサーが、それで切れた。野太い指に握られた槍の柄が、ぎしりと悲鳴を上げる。

「気紛れ、とは無粋な物言いだなランサー。元より幻のような身の上ならば、むしろこの刀の方こそが望ましいと思い、借り受けたまでのこと」

 アサシンの笑みが消えたことが、気配で分かった。自然体のまま、僅かに長刀の切っ先を持ち上げると、

「…………そもそもランサー。この刀の正体など、どうして気にする必要がある?」

「何――――」

「己を斬る刀の真贋などを知ることに、何の意味があるのかと聞いている。コレは、貴様を斬る刀だ。それ以外、果し合いの最中に余計なことに気を取られるというのなら」

 研ぎ澄まされた殺気は、まるで眼前の槍兵を誘うように。

「――――貴様の言葉通り。次はその首、落ちるぞ」

 必殺を、宣言した。






「…………残念だ、アサシン。まったく――――残念でならん」

 怒り、などという感情はとうに通り越したのか。ランサーの声色は、恐ろしいほどに静かで穏やかだった。

「貴様には、その大言を後悔する間すら与えてやれそうに無い」

 槍兵の腰が、より深く落ちる。
 地を踏みしめた両足を中心に、極限まで力を溜め込んだランサーの体勢は、限界まで引き絞られた弓を連想させた。

「――――疾く死ね、アサシン。我が槍を辱めた罪、その命で購ってもらう」

「よく言った、ランサー。その言葉通り、後悔する間だけは与えてくれるな――――!」

 轟音を伴うランサーの踏み込みと同時に。 
 鉄と鋼が、再び啼いた。





 □□□





 そうして彼は、今日までその贋作で死線を潜り抜けてきた。槍兵を退け、騎兵の首を落とし、狂戦士の異能を捌ききって見せたのだ。
 それは果たして、どれほどの技量をもって成された奇跡であったのか。
 その技に、その才に、恐らく贋作の作り手たる魔術使いは見惚れていた。自身の投影した贋作・物干し竿。それが最高の担い手によって振るわれる光景に、作り手として僅かな喜びすら感じていたかもしれない。
 だがその奇跡も今宵まで。
 これ以上その刀はもたないと告げる士郎に対し、アサシンは、

「言ったはずだ、マスター。私はこの刀によって呼ばれた。ならば命を預けるのに、これ以上相応しい刀は無いとな。
 ――――この刀が折れるのなら、それが終わりということだ」

「違う。確かに色々細工はしたけど、俺が投影したものじゃやっぱりあんたと縁なんて結べるわけが無いんだ」

 元より彼の無名を引き当てるための最大の頼りは、この円蔵山の土地であった。彼らはあくまで、前回魔術師のサーヴァントが行ったことの焼き直しをしたにすぎない。
 かつて一度見た物干し竿の贋作投影など、その確率を僅かにでも高められればよいというだけのものでしかなかったのだと、努めて冷静な表情で士郎は告げた。

「もう一度言う。そいつで戦うのは、もう止めてくれ。その刀はもう、あんたの命を背負えるような状態じゃない」

 頭を下げたわけではない。祈る仕草を見せたわけではない。だがそれでもその瞳が、なによりも明確に懇願の意を示していた。
 それは果たして、誰がための懇願であったのか。

「…………」

 それがわからぬアサシンではない。そもこの刀は借り物である。返せと言われれば返すのが道理。
 何よりも、これから彼が切り結ぶのは彼の二天の一である。史上にその名を轟かせし剛の剣。
 果たして朽ちかけたこの刀で、どれだけ受けきれるか。
 こだわる必要など無い。
 この刀で戦い続ける必要なぞ、そもアサシンには存在しない。
 だが、それでも。

「――――案ずるな。何より見くびるな、マスター。
 この刀は、折れぬ。
 折れはせぬし、折らせはせぬ」

 それでも、この刀はまだ折れていない。
 ならば、それは確固たる理由だった。この刀で戦う必要なぞ無くとも、理由はある。
 己を呼び出すためだけに鍛えられた、贋作・物干し竿。
 一度として振るわれることなく消えようとしていたこの刀を見た瞬間――――ふと、興が乗った。
 気紛れかも知れぬ。酔狂かも知れぬ。
 それでもこの刀で戦おうと――――そう決めたのだ。

「借り受けたものを、傷つけるような真似はせぬ。
 ――――この刀は、必ずそなたに返す。ただその前に、一つだけ許せ」

 誓いを呟く。唯一つ、残る最後の目的を果たせば、この刀と群青の侍の役目は終わる。
 許せ、という言葉に眉を顰めた士郎に、アサシンは涼やかに微笑した。
 
「――――よい刀だ」

 月に掲げ、呟いた。無銘であろうと偽物であろうと、時にはそれが花咲くこともある。
 それが、今宵だ。世界は知るまい。人は知るまい。それでいい。誰が知らずともこの剣士はそれを知り、これより月下に証をたてる。
 己に返る物なぞ、何一つあるまいが。

「マスター、そなたの鍛えたこの刀。この物干し竿を以って、今宵二天を斬らせて貰う」

 恐らくは。
 刀剣とその作り手に対するこれ以上の名誉は、史上存在しない。
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SAMURAI BLUEって何さ?
2006-06-13 Tue 02:08
何やらよろしくない日に短編を更新。
「俺の親父は街のダニ!!くたばれ豚野郎!!」のキャッチコピーがツボだったのです。ま、これはタイガー道場劇場版のキャッチコピーなのでHF4とは関係なさそうなのですが。
今回の短編は、このキャッチコピーを見たときにひらめいた中編のプロットをリサイクルしたものです。
まあ、つまり私にとって彼こそが最も執筆意欲を掻きたてるキャラなのだと思います。元はといえば「月聖」も彼のシーンありきの作品で、それが書きたいがために始めたSSなので。
公式に彼の出番が来るのは、さていつの日か。
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