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あなざー6
2006-02-27 Mon 16:40
 黒衣の剣士の顔に浮かぶ、傲慢な笑み。
 空を流れる雲が、月を覆った。闇が堕ちた石段の周囲で、風に煽られた木々がざわざわと音を立てる。

「――――大きく出たな、侍。こちらの真名を知ったことで、それほど優位に立ったつもりか」

 斬りつけるようなセイバーの言葉に、黒衣の剣士は「まさか」と首をふる。
 
「ぬしらの真名を確かめたことに、深い意味など無い。それを利としてぬしらに勝とうなどとは思わぬし――――ぬしらを相手にするのに、策など必要ない」

 『セイバー』の顔から、笑みが消える。

「真名を知られていたことがそれほど不快か?セイバー。ならば剣を交える前に、名乗る手間が省けた程度に考えておけ」

「ほざくな、『セイバー』。剣を交える前に名乗る――――その礼儀を説くのなら、まずは自らの名を告げたらどうだ」

 空気が、歪む。共に剣士のクラスで現界する二体のサーヴァント。両者の視線が交差する間に、殺気が生じる。
 

 月が、僅かにその顔を覗かせた。差し込んだ月光の下、『セイバー』はゆっくりと口を開く。



「――――名乗る必要など無い」



 清涼なその声は、黒衣の剣士の口から零れたものではなかった。サーヴァントは自らの正体を秘すもの――――その原則を破らんとした『セイバー』の暴挙を止めたのは、今まで沈黙していたアサシンだった。
 
「『セイバー』、貴様の言うとおりだ。我らが互いの真名を知ることに意味など無い。――――知るべきことは、己の刀で知れば良い」

 それとも、と呟き、アサシンは石段を一つ上がる。

「敗れる相手に、せめて名を刻みたいか?『セイバー』」

 雲が晴れ、完全に姿を現した満月の下。
 愉しげに笑うアサシンの姿は、どこまでも優雅だった。





 □□□





 理由のわからない、不安。『セイバー』が姿を現した時点で一層強くなったそれに焦がされながら、士郎はひたすらに黒衣の剣士が佩いた刀を注視していた。

(……何だ――――?)

 結論を言えば、『セイバー』の刀から何らかの力を感じることはできなかった。刀身を見たわけではないので断言することはできないが――――少なくともあの刀は、宝具ではない。
 恐らくは、無銘。何の概念も付随していない『セイバー』の刀と脇差は、しかしどこまでも禍々しい。

(く――――)

 直感で士郎は理解した。――――あの男は、人を斬りすぎている。
 重量で叩き切る西洋の剣と違い、刀の寿命は短い。どれほど研ぎ直したとしても、一振りの刀で斬れる数など限られている。
 だというのに『セイバー』の刀には、男が生前殺めた全ての人間の怨念が宿っているようだった。あの刀は、あるいは人がその担い手である『セイバー』に抱くイメージを具現化したものか。いずれにせよ『セイバー』の佩いた刀と脇差には、優に百を超える数の怨嗟が宿っていた。

 だが、例えそうだとしても。

(――――くそ)

 士郎には、あの刀が先刻から強く感じる焦燥の理由だとは、どうしても思えない。

『こっちにはセイバーとアサシンがいてくれてるんだ。相手がどんなやつだって、負けるはずが無い』
 
 あの言葉に嘘は無いと、士郎は己に強く言い聞かせた。例え『セイバー』がどれほどの達人であろうと、セイバーとアサシンの二人に比するとは思えない。
 ならば残るのは、セイバーとアサシンの真名を知った相手が、両者の天敵となる武具を用意している可能性だった。だが、その可能性とて無きに等しい。
 実力ではない。武器でもない。ならばいったい――――



「――――いいや。意味はある。わしがぬしらの真名を確かめたことに意味は無くとも、ぬしが儂の真名を知ることに意味はあろうさ。アサシン」



 そう、黒衣の剣士が告げた瞬間。

「――――!」

 最悪の想像が、不意に士郎の脳裏を過ぎった。

「――――ま、さか」

 背筋が凍る。喉が引きつる。
 蒼白となった士郎の顔を、黒衣の剣士は瞳で射抜いた。

「クク。そら、ぬしのマスターは気付いたぞ、アサシン。――――妙な話よな。儂の真名なぞ、ぬしならば知っていてしかるべきだろうに」

「何――――」

 不可解。アサシンの顔にその表情が浮かんだのは、一瞬のことだった。
 僅かに目を見開いたアサシンは、改めて『セイバー』の全身を一度眺めた。

「『セイバー』。貴様は――――」

 絶望と歓喜、相反する感情が士郎とアサシンを襲う。これだったのかと、士郎とアサシンの思考が同調する。根拠の無い不安、敵は極上の剣だという確かな予感。――――その具現が、ここにいた。
 確かに敵は最悪であり、そして極上だった。当然だ。あらゆる意味で、アサシン佐々木小次郎にとってこれ以上の相手はいない。

 黒衣の剣士は、託宣を告げるように。



「『セイバー』のサーヴァント、宮本武蔵。――――お初にお目にかかる。巌流、佐々木小次郎殿」




 天下無双を、口にした。














月聖あなざー 『二天に届く』

と、いうわけでタイトルどん。
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とりあえず復帰
2006-02-20 Mon 11:38
※この雑記には拙作の最新話のネタバレを含んでいます。









「――――生んで見せて頂戴。この世全ての悪(あなたの中にいるモノ)を」


 ――――生まれたのは、小粋でいかしたあんちくしょうでしたとさー。

と、いうことでFDは面白かった。そして致命的だった。だからこそ逆に、開き直って連載を何とか完結させようと決心しました。まあ、いつになるかはわかりませんが。
「月聖」は、連載当初に考えたあらすじを変えません。というか変えられません。改定も完結するまでは行わないつもりです。ひっそり静かに更新を続けます。
 作品を引っ込めたときにメッセージをくれた皆様、ありがとうございます。無理は承知、恥も承知で何とか完結にこぎつけたいと思います。

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